副題は「新しい地域再生、はじまる」。
ローカルジャーナリストとして地域のニュースを記録、発信している著者が、全国のローカル鉄道の問題点や取り組みを紹介しつつ、鉄道と地域の関わりについて論じた本。
取り上げられているのは、銚子電鉄、北条鉄道、肥薩おれんじ鉄道、一畑電車、いすみ鉄道、えちぜん鉄道、熊本電鉄、ひたちなか海浜鉄道、京都丹後鉄道、若桜鉄道、天竜浜名湖鉄道、わたらせ渓谷鐡道、高松琴平電気鉄道。
ローカル線を活かす方法や地域再生の手掛かりがいくつも記されている。
最大の顧客であり支え手である地元の住民とのかかわりを増やすことで、ローカル鉄道が自分ごとになり、当事者意識が芽生える。そうすれば、結果として、主体的にかかわってくれ、乗ってくれるようになる。
ローカル鉄道の価値をはかる指標が、採算性しかない。利益も大切だが、地域にどれだけ貢献しているか、住民が満足しているか、都会での知名度がどこまであがったか、こうした鉄道がもたらす価値を可視化する新しい仕組みをつくり、考え方を変えなければ、将来は暗い。
いくつかのローカル鉄道のトップに、鉄道とバスの違いを聞いたときに「鉄道は地図に載るという強みは大きい」と共通して答えていたことは興味深く感じられた。
人口減少や過疎化の流れの中で存廃問題に揺れるローカル線も多い。けれども、むしろローカル線を使って地域を活性化する方法や可能性があることを、本書は示している。「鉄道がなくなって栄えたまちはない」という言葉が重い。
2016年8月30日、河出書房新社、1500円。