2018年03月31日

草田照子歌集 『旅のかばん』


2009年から2017年までの作品392首を収めた第6歌集。

ビール少し昼も飲みたり旅の日は道草の子らのあそびのやうに
子はなくてもとよりなくてさびしさを知らざるわれをさびしむ人は
夜ふけて甲州街道行く車しづかになれり雨もやみしか
夫の部屋に旅行かばんあり長旅に何も持たずにいつてしまつて
アリの巣の新宿地下道にんげんはかたみに情報交換もせず
東急ハンズのスノードームに雪降らせつぎつぎ降らせ遊べるこころ
蝶か小鳥か落葉か知らず木々の間に絶えずひらひら舞ふ秋の日は
眠らむと羊を追へば深追ひになりていつしか雀のこゑす
マンションのただ一本の山ざくら咲かねばはじめて伐られしを知る
四千年ナイル西岸に墓残り雪のひとひらほどもなき生

2首目、子を持つ人と持たない人の意識のずれ。勝手に寂しいと決めつけないで欲しいのだ。
4首目、69歳で亡くなった夫。何度も繰り返し歌に詠まれている。
6首目、売場にならぶスノードームに雪を降らせて一人で見ているのだ。
7首目、秋という季節の感じがよく出ている歌。常に何かが舞っている。
9首目、花が咲く時期以外は注目することがなかったのである。

2017年9月30日、ながらみ書房、2500円。

posted by 松村正直 at 00:06| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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