副題は「かつて日本人だった人たちを訪ねて」。
2010年に文藝春秋より刊行された単行本の文庫化。
映画「台湾人生」(2009年)の監督である著者が、台湾で戦前の日本語教育を受けた方々に話を聞いたドキュメンタリー。
戦前の日本の植民地政策、戦時中の徴兵や工場への動員、そして戦後の二二八事件や台湾の民主化など、台湾の近現代史が生々しく語られている。
わたしたちは日本に捨てられた孤児みたいなもの。日本人の先生がおるし日本人の友達がおるのに、どうして日本はわたしたち孤児をかわいがってくれないの?(陳清香)
悲しかったのは、帰ってから中国(中華民国)籍に入れられて。これはもうほんとに悲しかったですよ。あのときは、泣いたですよ。日本軍人として戦った相手の敵の国の籍に入れ替えられて、なんだろうとぼくは日本政府を恨んだですよ。(蕭錦文)
思い出があるのが、「新高の 山のふもとの 民草の 茂りまさると 聞くぞうれしき」という明治天皇の歌なんだよね。「新高の山のふもとの民草」というのは、台湾中央山脈、新高山の周りに住む住民たち、とくに原住民たち。(タリグ・プジャズヤン)
言語、民族、領土、国家といった問題が様々に浮かび上がってくる一冊であった。
2018年1月20日、光文社知恵の森文庫、740円。