副題は「伝えたいことは伝わるのか」。
言語学的な興味があって読んだのだが、どちらかと言うと社会心理学やコミュニケーション学の話であった。様々な会話の実例や実験の結果などを、的確にわかりやすく解説している。
表情などもそうだが、非言語的チャネルには、言語に比べると自らは制御しにくいものが多い。制御しにくいから、正直な感情が表れやすい、ということを受け手も学習している。したがって言語と非言語が矛盾するような場合には、非言語の口調や表情のほうにより信頼を寄せるのである。
Aさんのような自己卑下は、実は相手から賞賛を得るための間接的手段とも考えられるのである。さらにこうした場合、自己卑下を否定されることによって、Aさんは精神的健康を得ている、ということを示す研究結果がある。
メッセージの送り手は自分が知っていることは受け手も分かっているだろうと推測する、つまり共通の基盤を過大評価する可能性がある。このためメッセージに配慮がなされず、受け手にうまく伝わらなかったり誤解を発生させる。
こういう話はただ興味深く面白いというだけではなく、いろいろと自分自身思い当たることもあって耳が痛い。
2013年1月25日、中公新書、880円。