2015年3月に小学館から刊行された単行本の文庫化。
「民藝」「演歌」「仏教」「美人」「流刑」「文学」「田中角栄」「鉄道」「原発」など、様々な切り口から「裏日本」(日本海側)について考察した本。軽いエッセイと思って読み始めたのだが、実はかなり本格的な日本文化論であった。
日本において資本主義が形成されていく時に、裏日本という概念もつくられていったと言えましょう。
演歌における日本海もまた、歌枕的役割を果たしています。
千年もの長きにわたって帝がいた日本の中心ということで、京都は「表」の街であると思われがちです。しかし京都は、表と裏とが強いコントラストで同居する街。
なるほど、と思わされる指摘ばかり。
著者の考えは、表と裏を上下関係として見るのではなく、補い合い引き立て合う関係として捉えるという点で一貫している。表の方が良いという価値観は、もういい加減終わりにした方が良いのだろう。
「北前船、ローカル線、北陸新幹線」に関する話の中で、地図学者の今尾恵介さんの「たとえば能登も、海運の時代は交通の要衝だったわけですよ。半島というのは、船の場合は便利な地なのだけれど、しかし陸路となると僻地になってしまう」という言葉が紹介されている。
まさにルビンの壺のように図と地が反転してしまったわけだ。こうした見方を知るだけでも、随分と日本の見え方が違ってくるように思う。
2018年1月9日、小学館文庫、600円。