2015年に新潮社から出た単行本にエッセイ2編と短編を新たに収録して文庫化したもの。
円紫さんシリーズを読むのは十数年ぶり。主人公の「私」も四十代半ばとなり中学生の息子がいる。計算すると、私(松村)と同じくらいの年齢のようだ。
取り上げられる作品は、芥川龍之介「花火」、太宰治「女生徒」「二十世紀旗手」、萩原朔太郎「夜汽車」など。
小説は書かれることによっては完成しない。読まれることによって完成するのだ。ひとつの小説は、決して《ひとつ》ではない。
一人称の告白らしい形をとった時よりも、作家は虚構の中でこそ自己を語るものだ。
短歌を題材に、こうした「日常の謎」系の本を書いてみたいなと思う。
2017年10月13日、創元推理文庫、700円。