「とっておきの詩歌」というテーマで歌人・俳人20名が文章を寄せている。いずれも書き手の熱意が伝わってくる文章ばかりで、読み応えがある。時流に全く乗っていない感じがまたいい。
取り上げられている詩歌をいくつかご紹介しよう。
いづくにか潜みてゐたるわれの泡からだ沈むるときに離れ来
二宮冬鳥
雪原と柱時計が暮れはじむ 松村禎三
白に就て
松林の中には魚の骨が落ちてゐる
(私はそれを三度も見たことがある)
尾形亀之助
ふれあえば消えてしまうと思うほどつがいの蝶のもつれて淡し
筒井富栄
編集後記によれば、六花書林は創業十二周年を迎えて十三年目に入ったと言う。「創業の直前に生まれた子が来春には小学校を卒業する」とあって、しみじみとした気分になった。
2017年12月5日、六花書林、700円。