副題は「人生が変わる30館」。
水族館プロデューサーとして多くの水族館の展示や運営に関わる著者が、全国の30の水族館を選んで、その特徴や見どころを解説したガイドブック。
それぞれの水族館の特徴によって、全体が「水塊の癒し」「命と地球」「日本人の世界観」「逆境からの深化」の4章に分かれている。このうち「水塊」という聞きなれない言葉は、著者が考え出したもの。
大多数の人、とりわけ大人が水族館を訪れる目的は、生物の観察ではない。(・・・)真の目的は、海や川の水中景観を見たり、水中感覚を味わうことだ。
こうした認識のもと、著者は水中感覚を伝える水槽の魅力を「水塊」と名付けた。これは、コロンブスの卵と言ってもいい発想の転換だと思う。
私たちは当り前のように、「動物園」と「水族館」を同列に考えるが、著者はそのことにも異を唱える。「動物園は動物を展示しているが、水族館は水槽を展示している」「水族館は元々、動物園より美術館に近い施設なのだ」といった指摘に、著者の水族館に対する考えはよく表れているだろう。
私は水族館が好きでかなり見に行っている方だと思うが、本書で取り上げられている30館のうち行ったことがあるのは9館だけだった。もっと、あちこち訪れてみたい。
2017年7月10日、文春文庫、890円。