京都学生映画連盟発行の「メモワール」という雑誌を手に入れた。
昭和26年7月1日発行の第三号。
ここに高安国世の「映画「白痴」を見て」という文章が4ページにわたって掲載されている。「白痴」はこの年公開された黒澤明監督作品。原作:ドストエフスキー。出演:森雅之、原節子、久我美子、三船敏郎。
映画の感想のなかに、ロシア文学が日本に与えた影響の話が出てくる。
(・・・)僕は日本のインテリの教養の中に占めるロシヤ文学の位置などということを思わされたのであつた。例えば歌人近藤芳美。彼は僕ら以前のインテリとはちがつて、甚だ日本的でない。それかといつて彼の茫々としてうすよごれた風彩(ママ)は決してフランス的でもドイツ的でもない――つまりヨーロッパ的ではない。僕はやはりロシヤ的な、そしてドストエフスキイの作品の中に想像出来るものではないかと思う。
高安がどのような目で近藤を見ていたかが伝わってくる、なかなか面白い評だと思う。