以前、伊藤一彦の歌に出てくる「ヘリオトロープ」についてブログに書いたことがある。
http://matsutanka.seesaa.net/article/403990871.html
ヘリオトロープは別名「香水草」とも呼ばれ、明治期に日本で初めて輸入された香水としても知られている。明治から昭和にかけての文芸作品にもよく登場する。
小野さんの手巾(ハンケチ)には時々ヘリオトロープの香(におい)が
する。
夏目漱石『虞美人草』
夕暮はヘリオトロウプ、
そことなく南かぜふく
やはらかに髪かきわけてふりそそぐ香料のごと滲(し)みるゆめかも
北原白秋『桐の花』
切れ切れになって飛んでは来るけれど、まるですずらんやヘリオトロ
ープのいいかおりさえするんだろう、その音がだよ。
宮沢賢治「黄いろのトマト」
先日、『平野萬里全歌集』を読んでいたところ、次のような歌があった。
かしこかとヘリオトロオプの煙立つ三階の窓見上ぐる夕
「我妹子」(明41〜43)
ここではヘリオトロープの「煙」が詠まれているのだが、これはどういうことだろう。匂いのことを「煙」と言っているのか。あるいは、当時お香か何かのようにヘリオトロープの良い匂いがする煙でもあったのだろうか。