谷じゃこ編集・発行の同人誌を2冊、文フリ大阪で購入。
相撲と短歌のアンソロジー「三十一番」。
9名の相撲に関する短歌5〜7首とエッセイ、さらに「ご贔屓力士・一首」が載っている。
立会いの瞬間息を吸う音がこんな後ろの椅子席にまで
谷じゃこ
テレビでは味わえない生観戦の醍醐味。溜席(砂かぶり)やマス席ではなく土俵から離れた椅子席まで、息の音が聞こえてくるとは!
最後まで見届けてこそ大相撲 弓取り式はエンドロールだ
のにし
テレビ中継を見ていると弓取り式の途中でぞろぞろと帰り始める人が多い。なるほど、確かに映画館の光景とよく似ている。
十両の取組をする年下の安美錦関を励ますこころ
生沼義朗
ベテラン安美錦は38歳。短歌の世界ならまだまだ若手と呼ばれる年齢だ。秋場所では優勝決定戦まで進み、来場所はまた幕内に帰ってくる。
野球と短歌のアンソロジー「三十一回裏」。
13名の野球に関する短歌5〜7首とエッセイ、さらに「オススメ野球本」が載っている。
いっぺんにふたりが死んでいくところ観たいから野球につれてって
石畑由紀子
上句はぎょっとする言い回しだが、結句まで来て野球のことだとわかる。併殺(ダプルプレー)とか刺殺とか盗塁とか、野球用語はけっこう物騒だ。
右中間を球はころがる耳寝かせ森に分け入るうさぎのように
小野田光
三句以下の比喩がおもしろい。まるで実際の白いうさぎが球場をぴょんぴょんと跳ね回っているような気分になる。
しきしまの日本の夏の終わるころ各地に届く甲子園の砂
蓮
「甲子園の砂」の観点から詠んでいるのがおもしろい。夏の高校野球は各都道府県の代表が出場するので、全国各地に砂が運ばれるわけだ。
表紙やデザインも凝っていて、とてもオシャレ。
短歌を楽しんでいる雰囲気がよく伝わってくる。
2017年9月18日、各350円。