2017年09月23日
大崎善生編 『棋士という人生』
副題は「傑作将棋アンソロジー」。
ベストセラー「聖の青春」の作者大崎善生が、将棋に関する文章26篇を選んだアンソロジー。沢木耕太郎、内藤國雄、団鬼六、二上達也、村上春樹、森内俊之など、錚々たる書き手が登場する。
しかも26篇が単に漫然と並んでいるのではない。芹澤博文の「忘れ得ぬひと、思い出のひと」の後に芹澤の師である高柳敏夫の「愛弟子・芹澤博文の死」が載っていたり、人工頭脳と将棋の話を書いた小林秀雄「常識」に続いて渡辺明「ボナンザ戦を受けた理由」があったりと、全体が有機的に繋がるように配列・構成されているのだ。
実に見事である。
長年、将棋雑誌の編集に携わってきた編者ならではの腕の見せ所だ。
他にも、文中に登場する桐谷広人五段が後に株主優待生活で有名になる桐谷さん(今日も「月曜から夜更かしSP」に出演する)であったり、師の京須七段の46歳という早すぎる死を悼む文章を書いている山田道美が自身36歳で亡くなったことなどを思うと、人生や生死ということをしみじみと考えさせられる。
「勝ち」と「負け」しかない世界というのは、何と非情で、美しいものなのだろう。
2016年10月1日、新潮文庫、630円。
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