2017年08月15日

「短歌往来」2017年9月号


米川千嘉子「つるつるの世」33首から、はじめの5首を引く。

 「お嬢さんの金魚」の歌よ水槽はとぷとぷとぷと夏のひかりに
 九州に豪雨はつづき七年間会ふことなき河野裕子さんをおもふ
 河野さんの「ちりひりひ」とか「妙(めう)な」とか ひるがほは首しろく
 咲きだす
 アホなことはどれほどどれだけ積み上がりし この七年を知らぬひる
 がほ
 河野さんのあかあか赤ままの良妻のうた その幸ひはいまもそよぐや

2010年に河野裕子さんが亡くなって、早くも7年が過ぎた。
河野さんを偲びつつ、移りゆく時代に思いを馳せているのだろう。

河野さんの歌がいくつも踏まえられている。

 お嬢さんの金魚よねと水槽のうへから言へりええと言つて泳ぐ
                      『歩く』
 ちりひりひ、ちりちりちりちり、ひひひひひ、ふと一葉(ひとは)笑ひ出し
 たり神の山              『体力』
 眠りゐる息子の妙(めう)な存在感 体力使ひて眠りゐるなり
                      『体力』
 美しく齢を取りたいと言ふ人をアホかと思ひ寝るまへも思ふ
                      『母系』
 良妻であること何で悪かろか日向の赤まま扱(しご)きて歩む
                      『紅』

こんなふうに古い歌を思い出しながら、歌を読んでいくのも楽しい。

posted by 松村正直 at 23:07| Comment(0) | 短歌誌・同人誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。