副題は「僕はこうして家をつくる」。
内田樹の凱風館を建築したことで知られる著者が、自らの生い立ちや建築家になろうとした理由、建築家とはどういう仕事か、建築家として考えていることなどを述べた本。
○内田樹著『ぼくの住まい論』
http://matsutanka.seesaa.net/article/413621903.html
○光嶋裕介著『みんなの家。』
http://matsutanka.seesaa.net/article/415872677.html
読んでいて文体が独特だなと思っていたら、あとがきに、「語り下ろし」という形式で書かれたことが記されていた。編集者とのインタビューをもとにして書き直した一冊ということのようだ。なるほど。
文章に限らず、スケッチやドローイングを描いているときも、本当に集中して何かを手探りで書(描)いているときは、全体像や目的地が、はっきりとはわからない状態から出発します。鮮度の高い何か得体のしれないものに触れながら、事後的に「わかる」という感覚がつかの間だけでも得られるのだと思います。
実際に見えるモノだけではなく、その向こう側にあるかもしれない見えないものに、建築家として対処することができないだろうかといつも考えています。その内に美しさを秘めた見えない存在を、仮に「物語」と呼んでもよいでしょう。
こうした部分は建築というジャンルに限らず、多くの創作に当て嵌まることだと思う。
合気道やプリコラージュなど、内田樹の影響が少し強過ぎるかなという気もするし、ところどころ正論過ぎて鼻につく部分もある。でも、全体としては著者の建築に対する思いが率直に述べられていて、質の高い内容だと思った。
2017年5月10日、ちくまプリマ―新書、880円。
根源はそこですね。
こんな別冊はありがたいです。
ちょっとテーマが大きくてあの分量で書き切れる問題ではないのですが、アンケートのような感じで書きました。