特集「30代歌人の現在」より。
ねぢれたるコースロープをほどきゆく会はなくなつたひとがゐさうで
楠 誓英
上句はプールでよく見かける行為だが、下句へのつながりが不思議でおもしろい。「ねぢれたる」と「会はなくなつた」が微妙に響き合う。
白鶴は雪の味せり 立ち飲みに夜がゆっくり降りてくるころ
大平千賀
上句の「白鶴」「雪」という白いイメージと下句の夜の暗さが、互いを引き立て合う。「降りてくる」という動詞の選びがいい。「更けてくる」ではダメ。
切る前のすいくわのやうな匂ひだなあ家族になつて九年目の夏
澤村斉美
家族にも歴史がある。今は「切る前のすいくわ」のように、瑞々しくて青臭い匂いがしているのだろう。まだ、切った後の西瓜ではないのだ。
知覧茶のしづくとなりてわがのどに少年兵のからだかぐはし
柳澤美晴
知覧はかつて特攻隊の基地があった町。茶の産地としても知られている。「しづく」「のど」「からだ」「かぐはし」の平仮名が効果的。何ともすごい歌だ。
ここは外してホッチキスでとめてフォルダーにいれてますが、読めば読むほど自分の整理にもなります。この号、買いそこねなくってよかったです。
こちらも鬼暑い日々です。ご自愛ください。(猫、かわいい!)
どうぞ体調にお気をつけて、お互いに良い歌を詠んでいきましょう。