副題は「文明の共存を考えるための99の扉」。
イスラームについて99のトピックを挙げて解説した本。「クルアーン」「スンナ派」「六信五行」「カリフ」「サラディン」「ムスリム同胞団」「アルカーイダ」など、イスラームの教えや暮らし、歴史、さらに現代の問題に至るまで、様々な話題を取り上げている。
アラビア語の原典だけがクルアーンであり、翻訳はあくまでも外国語での注釈に過ぎず、ムスリムは毎日五回の礼拝でクルアーンの第1章とその他の章句をアラビア語原典で読み上げる義務があります。
家事や子供の養育は妻の義務ではなく、召使の雇用が夫の扶養義務に含まれます。授乳ですら妻の義務ではなく、夫が乳児に乳母をあてがわねばなりません。
イスラーム法は属人法であり、異教徒には課されませんが、使徒を誹謗した者は不信仰者であっても殺害されることもあります。
イラン・イスラーム革命は、西欧型の政教分離、世俗化が世界中で不可逆的に進行すると信じていた西欧にとって大きな衝撃であり、その後の世界的なイスラーム復興現象の顕在化の狼煙となるものでした(・・・)
この本の基本的な立場は、「理解はできないけれども共存するために知っておくべき」という点にある。例えば、上に挙げた「殺害される」というところなど、そんなのおかしいと私たちの多くは思うのだけれど、まずはそうした事実を知っておくことが大切なのだろう。
相手の持つ価値観や考え方を「肯定」「否定」するのではなく、まずはそれをきちんと知ること。それは今後ますます大事になっていく態度なのだと思う。
2017年2月22日、集英社新書、760円。