この本は第一部に「ローマ字日記」が漢字かな交じり文で載っており、第二部には「一握の砂」(短歌)、「呼子と口笛」他(詩)、「時代閉塞の現状」(評論)、「葉書」(小説)が載っている。それぞれ丁寧な解説も付いているので、啄木の全体像がよくわかる。
智恵子さん!なんといい名前だろう!あのしとやかな、そして軽やかな、いかにも若い女らしい歩きぶり!さわやかな声!(明治42年4月9日)
ちょっと茂吉の「ふさ子さん!」という手紙を思い出す。
そして、人に愛せらるな。人の恵みを受けるな。人と約束するな。人の許しを乞わねばならぬ事をするな。決して人に自己を語るな。常に仮面をかぶっておれ。(4月12日)
いかにも啄木という感じがする。23歳の若い自尊心。
妄想は果てもない!函館の津波・・・金田一君と共に樺太へ行くこと・・・ロシア領の北部樺太へ行って、いろいろの国事犯人に会うこと・・・(4月18日)
金田一京助は明治40年にアイヌ語研究のために樺太へ渡っており、その時の話を啄木にも聞かせている。啄木も樺太へ行くことを夢見ていたようだ。「樺太まで旅費がいくらかかります?」(4月17日)と金田一に訪ねたりもしている。
2012年4月11日、教育評論社、1800円。