2017年02月03日

大森静佳歌集 『サルヒ』

モンゴルへ旅行した時の写真と短歌30首を載せた1冊。
タイトルの「サルヒ」はモンゴル語で「風」という意味とのこと。

草原に火を芯として建つ包(パオ)のひとつひとつが乳房のかたち
唇(くち)もとのオカリナにゆびを集めつつわたしは誰かの風紋でいい
顔が長いだけなのにいつもうつむいているように見える馬たちしずか
朝。シャツを脱いできれいなシャツを着る異国の闇を手に探りつつ
犬の死骸に肉と土とが崩れあう夏。いつまでも眼だけが濡れて

1首目、中央に炉があることを「火を芯として」と言ったのがうまい。
2首目、小さなオカリナを吹いているのだろう。下句が個性的で印象的なフレーズだ。風が過ぎた跡にできる風紋であってもいいとの思い。
3首目、おもしろい発見の歌。確かに馬は俯いている感じがする。
4首目、朝の暗がりでの着替えの場面。「異国の闇」がいい。
5首目、土に同化していきながらも、眼だけは生前のようになまなましく残っている。

写真の青空と草原の色が美しい。
犬、馬、羊、牛、そして子供たちが、みな生き生きとしている。

2016年11月23日、500円。

posted by 松村正直 at 21:34| Comment(1) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
竹下氏、大森氏の歌を鑑賞しています。

  秀歌逍遥(987)(988)
Posted by 小川良秀 at 2017年02月04日 12:53
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