実は、この北方領土問題は樺太とも深い関わりがある。
一つは、ロシアの行政区分において、北方領土は樺太と同じ「サハリン州」に属しているという事実である。サハリン(樺太)と北方領土の間には船や飛行機の定期便が就航し、人々や貨物が行き交っている。

(サハリン州旗)
もう一つは、北方領土も樺太も帰属が確定していないという共通点である。日本で発行されている地図において、南樺太(北緯50度以南)と千島列島(ウルップ島以北)は白抜きとなっていることが多い。

(外務省のHPより)
これは、1951年のサンフランシスコ講和条約によって日本は南樺太と千島列島に関する権利をすべて放棄したものの、この条約にソ連・ロシアは加わっておらず、「南樺太及び千島列島の最終的な帰属は未定である」というのが日本政府の公式見解であるからだ。
これは、戦後70年以上が過ぎた今も変っていない。ロシアとの平和条約が結ばれるまでは、4島の帰属が決まらないだけでなく、南樺太や千島列島も実は「帰属は未定」の状態に置かれているのである。
この「帰属は未定」という、いわば宙吊りの状態に置かれてきたことこそが、樺太が近くて遠い場所になってしまった一番大きな理由なのだろうと思う。