実習生、留学生、日系人として日本で働く多くの外国人労働者。その暮らしを取材するとともに、日本の抱える問題点を鋭く分析した本。
コンビニ弁当の製造工場、宅配便の仕分け現場、新聞配達、ホタテの加工場、建設現場など、現代の様々な職場で外国人労働者なしでは成り立たない状況が生まれている。
以前、私が働いていた物流倉庫やプラスチック成型工場でも、中国人やベトナム人の実習生が働いていた。今年見た映画「牡蠣工場」でも中国人の実習生の姿があった。
その一方で、日本は単純労働を目的とした外国人の入国を認めていない。そのため、「国際貢献」「人材育成」を掲げた外国人技能実習制度による実習生や、「留学生30万人計画」により推進されている留学生という形で、実際には単純労働に従事する多くの外国人労働者を受け入れている。
その実態は、本書の見出しを拾えば「現代の奴隷」「蟹工船」「日本語学校によるボッタクリ」「違法就労と残業代未払い」「ピンハネのピラミッド構造」といったものだ。
本音と建前の大きな乖離と多くのごまかし。著者はそうした実態を明らかにしたうえで、次のように提言する
日本人の嫌がる職種で人が足りないのであれば、まずはそれを認めたうえで、外国人労働者の受け入れについて本音で議論すればよい。「実習」などでごまかさず、あくまで現場にとって何が最善なのかを優先して考える。
さらには、将来的な移民の受け入れという問題についても次のように述べる。
移民の受け入れとは、単に労働力を補充することではない。日本という国を構成するメンバーとして、生まれ育った環境や文化の違う人たちを迎え入れることなのだ。言語の習得、就職、さらには子弟の教育などへの支援を通じ、日本社会に適応してもらえるよう、私たちの努力も求められる。まるでモノでも輸入するかのような発想では、後にさまざまな問題が起きるに違いない。
現在の、そしてこれからの日本社会を考えるうえで、避けては通れない大事な問題だと思う。
2016年7月20日、講談社α新書、840円。