と言っても、領土問題自体に関心があるわけではない。現実的に考えて、4島が一括で戻って来るなどということはあり得ないと思う。そもそも日本が主張する「日本固有の領土」といった表現は、いかにも島国の発想であって、国際的には何の力も持たないだろう。国境線は「動く」ものだ。
北方領土にしても、もとはアイヌの住む土地であり、「日本」の支配下に置かれたのは1855年の日魯通好条約以後のことでしかない。そこから1945年の敗戦まで90年。戦後のソ連・ロシアによる支配は既に71年に及んでいる。これで「日本固有の領土」などと言ってみても、仕方のないことだ。
それよりも私が期待するのは、何らかの妥結が図られて、北方領土に自由に行けるようになることである。現在、「政府は、日本国民に対し、北方領土問題の解決までの間、北方四島への入域を行わないよう要請しています」(外務省HPより)という状況で、元島民やその親族、マスコミ関係者などを除いて、原則として北方領土へ渡ることはできない。
「北方領土へ行ってみたい」
それが私の願いである。
昭和16年7月に、歌人で国会議員の吉植庄亮は北千島視察団の一員として千島を訪れ、帰りに択捉島にも寄っている。
択捉(エトロフ)までかへり来りて蒲公英もおだまきも百合も花ざかり季(どき)
流(ながれ)なす鯨の血潮なぎさ辺の波をきたなく紅くそめたり
夏駒といふは勢ふ若駒の駈り移動する五六十頭の群
『海嶽』
択捉島で見た捕鯨と野生馬の光景である。
この歌が詠まれてから75年。
今ではどんなふうに変っているのだろうか。
領土問題に何らかの決着が付けられて、国後島へも自由に行けるようになるといいなと思います。温泉も湧いているみたいだし。