2016年10月22日

二宮敦人著 『最後の秘境 東京藝大』


副題は「天才たちのカオスな日常」。

一般にはあまり知られていない東京藝術大学の内側を描いたノンフィクション。執筆のきかっけは、藝大生の妻を見ていて興味が湧いたからということらしい。サブカルっぽい表紙であるが、中身はいたって真面目で、多くの藝大生に取材して書かれている。

一口に藝大と言っても、「美術学部(美校)」と「音楽学部(音校)」の二つに大きく分かれる。さらに細かな学科や専攻があり、登場する学生の所属を見ると、「絵画科日本画専攻」「楽理科」「音楽環境創造科」「工芸科陶芸専攻」「器楽科ホルン専攻」「建築科」「指揮科」「声楽科」「先端芸術表現科」「邦楽科長唄三味線専攻」「作曲科」「芸術学科」「デザイン科」「彫刻科」など、実に多彩だ。

そしてみんな、一癖も二癖もありそうな人ばかり。

「僕、没頭してしまうんです。四十時間描きつづけるとか、よくやります」
「口笛にはいろいろな奏法があるんです。ウォーブリングとか、リッピングとか・・・」
「はい、それはもう、かぶれます。漆芸専攻では『かぶれは友達』です」
「楽器は体に合わせるのも大事になってきます。/ヴァイオリン奏者って、骨格が歪んでいるんです」
「彫金はですね、金とか銀とか、場合によってはプラチナとか、貴金属を使うので材料にお金がかかるんですよね。だから、学生はみんな相場を毎日チェックしてます!」

どれもこれも初めて知る話ばかりで面白い。こんな世界があったのかと驚くことばかり。

藝大の学園祭「藝祭」を一度見に行ってみたいものだ。

2016年9月15日、新潮社、1400円。

posted by 松村正直 at 20:48| Comment(2) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
読みました。
去年の今頃、東京藝大彫刻科を娘と見学して来ました。その時案内して下さったのが彫刻科の吉野さんでした。本にはありませんでしたが、大石膏室という世界中の彫刻の石膏レプリカが展示されている体育館位の部屋など圧巻でした。芸祭より早く卒業制作展もありますので、その折には大石膏室も見学できましたし、おすすめです。広大な森に外来種の緑色のインコが群れ飛ぶ様といい、非日常の世界が広がっていました。
Posted by 谷口美生 at 2016年10月22日 21:43
吉野さん、本にも出てきましたね。
次回の卒業制作展は来年の1月26日〜31日。何か東京へ行く用事と合わせられると良いのだけど。
Posted by 松村正直 at 2016年10月23日 06:27
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。