2016年10月17日

祖田修著 『鳥獣害』


副題は「動物たちと、どう向きあうか」。

近年、シカ、イノシシ、サル、クマなどによる鳥獣害が非常に大きな問題となっている。その現状と対策、さらには西洋と東洋の鳥獣観の違いや歴史的な変遷なども交えつつ、今後の人間と動物との共棲のあり方を記した本。

農業経済の研究者である著者は、京都府南部の中山間地域に90坪の田と140坪の畑を持ち、夏場は週に2〜3日、冬場は週に1日程度通っている。そこで目の当たりにした鳥獣害の話から始まる前半は、非常に具体的な話が続き面白い。

一方で後半の宗教学や民俗学に基づいた鳥獣観の話は、「・・・だという」「・・・とされる」「誰々は・・・としている」といった伝聞や引用が多くなり、人間と動物の関わり方を理論的に体系づけようとする意図はわかるのだが、やや退屈に思われた。

ディープ・エコロジーの関連書はいずれも、近代科学の基礎理念を確立したデカルトが動物には人間と異なり、理性や感情がなく、一種の機械である(『方法序説』)といっていること、またキリスト教では、動物は人間によって利用され、食されるのは当然で、そのためにこそ世界に生を受けたとされてきたことについて触れ、その不当性を訴えている。

このあたり、欧米を中心としたクジラの保護運動とも関わる話で、なるほどと納得するところがあった。

2016年8月19日、岩波新書、820円。

posted by 松村正直 at 10:34| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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