「本の話WEB」2015年2月8日〜2016年1月24日の連載をまとめたもの。
「回文」「アナグラム」「早口言葉」「しりとり」「アクロスティック(折句)」「なぞなぞ」など、様々な言葉遊びについて、自作もまじえながら全12章にわたって書いている。
【回文】
気温は地獄、五時半起き
サウナ「かもめ湯」で夢も叶うさ
【アナグラム】
「桐島、部活やめるってよ」→「〆切破って捕まるよ」
「アナと雪の女王」→「同じ京都の鮎」
とにかく面白い。言葉に興味がある人なら、誰でも楽しめると思う。それだけでなく、歌人山田航を考えるうえでも必読の内容と言っていい。今月の毎日新聞の「短歌月評」(9月19日)でも取り上げさせていただいた。
しりとりは単に言葉を発見して並べてゆくという楽しみばかりではなく、たった一文字が共通しているというだけで、本来なら無関係な言葉同士がどこまでもつながっていってしまう奇妙な文脈を作る楽しみでもあるのだと思う。
回文もそうだけど、受け手として楽しむばかりじゃなくて、自分でも作ってみることで言葉の世界へさらに深く潜ってゆけるようになるし、もう一度受け手に回ったときの驚きもより一層深いものになる。
こんな文章を読むと、あれっ?短歌に似ているなと思う。比喩の話や上句と下句の取り合わせ方の話、短歌の作者と読者の話を聞いているみたいだ。
そう、実はこの本は短歌の本でもあるのだ。
とにもかくにもとりあえず、短歌というのはそもそもが言葉遊びの精神に根差しているもの。
結局のところ僕は「言葉遊びの最終進化形」として今日に至るまで短歌をいじくり回しているような気がする。
ここには、短歌は「究極の言葉遊び」という短歌観が明確に打ち出されている。「言葉遊びをなめるな」「言葉遊びという語を軽々しく用いてもらいたくはない」と述べる著者の本気がずしんと伝わってくる1冊である。
2016年4月25日、文藝春秋、1300円。