鳥取の松葉蟹の子生きながら箱詰めに五尾送られて来ぬ
耳に執する三木富雄作の巨大なるアルミニウムの「耳」しんと
あり
餌やりは禁止となりて知床の遊覧船にユリカモメ見ず
〈御茶ノ水橋口〉を出て地下鉄の「御茶ノ水」まで歩いて二分
「裸体」「裸婦」裸の人を描(えが)くとき黒田清輝は集中せりき
1首目は巻頭歌。「生きながら」がいい。ちょっとかわいそうだけど美味しそう。
2首目、「耳」「三木」「アルミ」「耳」のミ音の反復がうまく響いている。
3首目、当り前の話だが、カモメは観光客へのサービスで来ていたわけではなく、餌を目当てに来ていただけだったのである。
4首目、JRの御茶ノ水駅を出て、橋を渡って丸の内線の御茶ノ水駅へ。このちょっとした乗り換え。
5首目、裸だから集中したわけでもないと思うが面白い。「清輝(せいき)」と「せりき」の響き合いも効いている。
2016年9月22日、六花書林、2500円。