2016年09月13日

筒井康隆著 『旅のラゴス』


昭和61年に徳間書店より刊行され、平成元年に徳間文庫に収録され、さらに平成6年に新潮文庫に入ったもの。一昨年くらいから、かなり売れているらしい。帯に大きく「口コミで人気爆発!」とある。

短歌をやるようになってから小説はあまり読まなくなったのだが、以前はよく読んでいた。筒井康隆も好きな小説家の一人。

題名の通り、ラゴスという旅をする男を主人公とした物語。12の話が連作風に続いていて、短い話もあれば、長い話もある。

人間はただその一生のうち、自分に最も適していて最もやりたいと思うことに可能な限りの時間を充(あ)てさえすればそれでいい筈(はず)だ。

という一文など、まさにその通りという気がする。

解説で村上陽一郎も書いているが、「ビルドゥングス・ロマン」(主人公が様々な経験を経て成長していく物語、教養小説、自己形成小説)と言っていい内容だ。そうした点では古典的でありつつ、随所にSF的な要素も混ざってくるあたりが、筒井康隆らしいところだろう。

私も旅に出たくなった。

平成6年3月25日発行、平成26年1月25日16刷改版、平成27年8月30日30刷、新潮文庫、490円。

posted by 松村正直 at 09:40| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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