2016年09月12日

『不屈の棋士』 のつづき

将棋ソフトに関する話の中で特に興味深かったのは「人間にしか指せない将棋というものはあるのか」という問題。著者はこの質問も棋士にぶつけている。

羽生 人間にしか指せない将棋・・・。うーん・・・何とも言えないですね。ソフトがドンドン進化した時に、この人っぽい将棋というのを指せるようになる可能性はかなりあると思います。たとえば昔の大山(康晴)先生っぽい棋風のソフトを作るというのは多分できるんじゃないかと。

このあたり、「エミー」という自動作曲ソフトがバッハ風の曲を生み出した話を思い出す。短歌で言えば、「斎藤茂吉風の歌」とか「塚本邦雄調の歌」といったものを人工的に作成できる可能性があるわけだ。

実際に、石川啄木の『悲しき玩具』の巻末に記された未完成の歌を復元するという試みも行われている。
https://sunpro.io/c89/pub/hakatashi/introduction

渡辺 人間にしか指せない将棋とかそういうことではなく、人同士がやるからゲームとして楽しめるんです。たとえばマルバツゲームがそうでしょう。あれをコンピュータとやる人はいない(笑)。

これも、ある意味で正論だろう。この本を読み終えて一番感じたのは、結局人間同士の戦いだから面白いということである。このあたりは、相手がいない短歌とは違うところだ。短歌で戦いと言えば「歌合せ」くらいか。

森内 厳しい質問ですね。プロ棋士としてやっている以上、少しでも内容を充実させたいと思いますが、人間は必ずどこかで間違える。それが現実です。将棋の世界に限らず、どんな世界でもミスをしない人はいないのです。

ミスすることも含めての人間である。そう言えば先日、郷田真隆王将が公式戦で「二歩」を指して反則負けとなった。そんなことが起こり得るのも人間ならではのことであり、そこにドラマがあるのかもしれない。

posted by 松村正直 at 09:19| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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