何年かまえの「塔」の全国大会の講演で「自分の歌に耐える」ということをちょっと言った。それに補足しておくと、長いあいだ歌を作りつづけていると必ず自分の歌に飽きてしまう時期がくる。そういうときに歌を止めるのは簡単かもしれないが、それは早計というものである。
続いて、河野さんは「歌を止めようとか、ちょっと休もうとしたとき仮に六十点くらいのレベルに居る」と仮定して、こう書く。
六十点に耐えて作りつづける。これが肝要。
この言葉に、私は何度勇気づけられてきたかわからない。
100点ではない。80点でもない。60点である。
それに耐えて、歌を詠み続けるのだ。
こんにちは。
点数の話では、「いつも80点90点を取っているのは、優等生で面白くない。
20点か120点を心がけること」
「不特定多数にすり寄らない。
サービスしすぎると品が悪くなるのです」
などもありました。
でも点数の話をしながら、「いい歌を作ろうと思わんこと。
言葉が言葉を引っ張ってくれよります」
「頭ではなく体をとおして」というのにも、
私も何度励まされたかわかりません。
歌と関係ないのに。
短歌でも絵でも、共通するところがあるのでしょうね。歌作りに迷ったり、行き詰ったりしたときに、河野さんに言われた言葉を思い出します。
またいつかお会いしましょう。
その5月号でした。
その新樹滴滴を読んで、わたしは「塔」に入れて
もらおうと決めました。
そうでしたか。その後、8月号の新樹滴滴が最後になりましたね。今から思えば遺言のような言葉ばかりです。