副題は「現れるモノ、隠れるモノ、見たいモノ」。
2012年に角川書店から出た単行本の文庫化。
恐山のイタコ、大谷宗司(心霊科学協会理事長)、荒川靜(スピリチュアル・ワーカー)、木原浩勝(怪異蒐集家)、山本大介(OFU代表)、堤裕司(ダウザー)、木内鶴彦(臨死体験者)など、オカルトに関わる人物に取材したルポルタージュ。
著者のスタンスは、超常現象やオカルトを「ある」か「ない」かの二元論で裁こうとしないところにある。
オカルトの語源はラテン語の「occulere」の過去分詞「occultus」で、意味は隠されたもの。
という原義の通り、著者が不思議な現象を取材し、観察しようとすると、それは常に隠れてしまう。「あきらめようと思えば視界の端にちらりと何かが動く。凝視しようとすると二度と見えなくなる」といった具合だ。
肯定であれ否定であれ、断定したい。曖昧さを持続することは、実のところけっこうつらい。
立場を決めて断定するのは、むしろ簡単なこと。肯定と否定の狭間に居続ける執念こそが、この本を支えている。それは、他の社会問題に関しても一貫している著者の姿勢であろう。
2016年6月25日、角川文庫、720円。