副題は「筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」。
2003年に北海道新聞社から刊行された本の文庫化。
以前、この著者の2作目『北の無人駅から』(すごい本!)について、ブログで取り上げたことがある。
http://matsutanka.seesaa.net/article/387138721.html
このデビュー作もまた、すごい本であった。
進行性筋ジストロフィーでほぼ寝たきりの重度障害者と、その介助をするボランティアをめぐるノンフィクション。本を買って3年、ずっと読むのを躊躇っていたのだが、読み始めると圧倒的な力でぐいぐいと引き込まれた。
この人はすごい。
自らも介助のボランティアに参加しながら、著者は障害とは何か、介助とは何か、ボランティアとは何かについて考える。さらには、他者と関わるとはどういうことか、生きるとはどういうことなのか、といった問題へと話を深めていく。
障害者もボランティアも、決してやさしかったり、純粋なだけの人間集団なのではなく、ときには危ういドロドロとした、ひどく微妙な人間関係の力学の上に成り立つ世界なのだ。
従来の自立観では、「他人に依存せず、自分だけでやってゆける」のが自立と考えられていた。しかし、重度障害をもつ自立生活者たちというのは、いわば、「他人と関わること」を宿命づけられた人たちである。
「よかれ」と思ってやったことが、そうではなかったときの驚き。やさしさが裏目に出、アドバイスが裏目に出、互いの意志と意志、気持ちと気持ちがチグハグに食い違う瞬間。そのとき人は、「他者」というものの存在を思い知らざるをえないのだ。
何十人という人物から話を聞き、一人一人の考えや意見に寄り添いながら、それら全体を一冊の本にまとめ上げる粘り強さ。書きながら、自問自答を繰り返しつつ、決して安易な結論に導いてしまわない忍耐力。本当にすごいものだと思う。
本を読んで久しぶりに泣いた。
2013年7月10日、文春文庫、760円。
読んでみたいと思います。
つい最近、カウンセリングの活動をしている人の話を聞いたのですが、カウンセリングに訪れるひとのなかには介護スタッフのかたや看護師さんなど、援助職と呼ばれる仕事に就いているかたがけっこういらっしゃるということでした。
相手を思って一生懸命すれば、また葛藤のようなものが生まれるのでしょうね。
(って、こういうふうに安易に書かれていない本なんですよね。読みまーす。)
読みました。
最初ぱらぱらっ!とめくった時に、入っていけるかなとちょっと思ったのですが、いざ読んでみるとどんどんすすみました。
登場する人が話すことはどれも、そう特別じゃない、というところがとても興味深かったし親近感を持ちました。たまに、この人の考え方いいな!と思ったり。
本音をすっと話させる作者もすごいと思いました。でも、ほんと、作者は行きつ戻りつ、誠実に書こうと向き合えば筆が進まず後半大変そうでしたね・・・。
相模原の事件があって、あらためていろいろと考えさせられています。