鯨揚ぐ知らせの笛の長鳴りす
捕鯨船舳の銛の日を返す
高鳴れる轆轤に鯨あげらるゝ
「轆轤」と言うと茶碗でも作るように思ってしまうが、ウインチのことである。尾びれにロープを掛けて吊り上げるのだ。
鯨さく長柄包丁両手もち
鯨さく忽ち磯を赤にそめ
割かれゆく鯨の肉のなだるゝよ
岸に揚げられた鯨は、その場ですぐに解体されたようだ。
海の水が血に赤く染まってゆく。
鯨割く仔鯨出でゝいとしけれ
鯨さく尼も遊女も見てゐたり
解体された鯨はメスだったようで、お腹の中から胎児の仔鯨が出てくる。
港には大勢の見物客が集まっていたようだ。
「尼も遊女も」の句が、一連20句の最後となっている。
ちなみに網走は、現在でも国内に残る数少ない捕鯨の町の一つである。
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