句集『海豹島』は、その旅で詠まれた俳句を集めたものであり、後半には「蝦夷行日誌(俳諧日誌)」も収められている。
絶え間なく湧く霧に翔けロツペン島
膃肭獣は吼えロツペン叫ぶ霧の島
百の成牝(カウ)の王たる成牡(ブル)に秋日爛
土に化す幾幼獣の屍に秋日
目に涼しロツペン鳥の青卵子
タイトルともなった樺太の海豹(かいひょう)島を詠んだ句である。「海豹」はアザラシだが、実際はオットセイとロッペン鳥(ウミガラス)の繁殖地として有名な島だ。2句目の「膃肭獣」はオットセイ。今では「膃肭臍」と書くことが多い。
本の表紙も海豹島。
手前にはオットセイ、崖と空にはロッペン鳥。
裏表紙はロッペン鳥のアップ。
こうして見るとペンギンみたいだ。
昭和15年10月20日、京鹿子発行所、1円80銭。