全国にある「猟師が自ら料理を提供する店」を取材した本。
愛知県名古屋市の「百獣屋然喰(ももんじぜんくう)」、石川県白山市の「CRAFT WORKS ER」、滋賀県大津市の「猪ゲルゲたこゲルゲ」、大分県佐伯市の「RYUO」、佐賀市の「GABAIいのしし食彩」など9店が紹介されている。
著者の本を読むのはこれで4冊目。
『マタギとは山の恵みをいただく者なり』
http://matsutanka.seesaa.net/article/387139111.html
『女猟師』
http://matsutanka.seesaa.net/article/387139286.html
『日本人は、どんな肉を喰ってきたのか?』
http://matsutanka.seesaa.net/article/394034729.html
いずれもカラー写真が豊富で、読んでいて楽しい。
(解体の場面なども多いので、苦手な人は苦手かもしれない)
獣肉はスーパーで売っている肉とは完全に別物だ。畜産肉は飼育期間が短く若いうちに処理される。
それに比べると野生肉は(・・・)雌雄、年齢による個体差は大きく、それが肉質に影響するのだ。いつどこで買っても差のないスーパーの肉とはここが決定的に違うのである。
人間に置き換えて考えてみればわかりやすい。男女によって、また子供からお年寄りまで年齢によって、同じ人間でも身体は大きく違う。それが普通のことなのだ。
本書の中で繰り返し語られるのは、狩猟の方法やその後の処理の仕方で肉の味が全く違ってくるということ。その点において「猟師兼料理人」は最も良い形で野生肉を提供できる人ということになる。
ジビエ料理の背景には物語があると私は思っている。肉となった獣それぞれの人生(獣生?)、それを仕留めた猟師、そして料理をした人の哲学が混ざり合うのがジビエ料理ではないだろうか。
料理だけではなく「物語」も味わうこと。
そこにジビエ料理の美味しさと魅力の秘密があるのだろう。
2016年4月10日、えい出版社、1500円。