2016年06月16日

武田知弘著 『教科書には載っていない! 戦前の日本』


戦前(主に昭和初期)の日本の社会がどんなものであったのか、34のトピックを挙げて解説した本。「国会議員にヤクザの親分がいた」「危ないクスリが薬局で買えた!」「大阪が日本最大の都市だった!」「サラリーマンはエリートだった!?」「海を渡った移民たち」といった話題が並んでいる。

著者は「軍国主義」や「暗黒の時代」という面だけでは戦前の日本は捉えられないことを指摘し、「思想的な解釈をせずに見た場合、戦前の日本ほど面白い時代はない」と述べる。これがあまり行き過ぎると歴史修正主義に陥ってしまうのだが、そのあたりのバランスはよく取れているように感じた。

昭和5年、大阪の北新地に、女給とキスができる接吻カフェ「ベニア」が登場。たちまち大評判になり、雨後のタケノコのように次々と同種の店が誕生した。
自転車の製造は、フレーム部など鉄砲と共通する技術が多かった。そのため、鉄砲鍛冶たちは自転車が普及しはじめると、まず修理業をはじめ、そのうち自ら自転車を製造するようになったのである。
松坂屋は関東大震災の復興を機に、畳敷きの売り場をやめて、土足のまま入ることのできるフロアに改装したのである。それまでの日本のデパートや小売店は、玄関先で履物を脱ぎ、中に入ることになっていた。

このように描かれた一つ一つの事実の中から、戦前の日本の姿が少しずつ浮かび上がってくる。

残念なのは一目でわかるような誤植が非常に多いこと。「対象(大正)のはじめ」「日本軍に終われ(追われ)」「東方(東北)帝国大学」「社会は(社会派)ルポ」など、かなりお粗末である。

2009年1月14日、彩図社、1200円。
posted by 松村正直 at 08:11| Comment(2) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
戦前はどんなだったのだろう、と興味が湧き、

読んでみました。 

この本を横に、家族で色々話をしていて、

初めて祖父が薬屋の丁稚奉公をしながら

夜学に通っていたことを知りました。

戦前生まれの方に、もっとお話を聞いてみたいな、

と思えてくる一冊でした。



Posted by もり at 2016年06月18日 21:28
戦前のことは意外と知らないものですね。祖父母が生きていた頃にいろいろ話を聞いておけば良かったなと思います。

Posted by 松村正直 at 2016年06月19日 10:31
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