戦前(主に昭和初期)の日本の社会がどんなものであったのか、34のトピックを挙げて解説した本。「国会議員にヤクザの親分がいた」「危ないクスリが薬局で買えた!」「大阪が日本最大の都市だった!」「サラリーマンはエリートだった!?」「海を渡った移民たち」といった話題が並んでいる。
著者は「軍国主義」や「暗黒の時代」という面だけでは戦前の日本は捉えられないことを指摘し、「思想的な解釈をせずに見た場合、戦前の日本ほど面白い時代はない」と述べる。これがあまり行き過ぎると歴史修正主義に陥ってしまうのだが、そのあたりのバランスはよく取れているように感じた。
昭和5年、大阪の北新地に、女給とキスができる接吻カフェ「ベニア」が登場。たちまち大評判になり、雨後のタケノコのように次々と同種の店が誕生した。
自転車の製造は、フレーム部など鉄砲と共通する技術が多かった。そのため、鉄砲鍛冶たちは自転車が普及しはじめると、まず修理業をはじめ、そのうち自ら自転車を製造するようになったのである。
松坂屋は関東大震災の復興を機に、畳敷きの売り場をやめて、土足のまま入ることのできるフロアに改装したのである。それまでの日本のデパートや小売店は、玄関先で履物を脱ぎ、中に入ることになっていた。
このように描かれた一つ一つの事実の中から、戦前の日本の姿が少しずつ浮かび上がってくる。
残念なのは一目でわかるような誤植が非常に多いこと。「対象(大正)のはじめ」「日本軍に終われ(追われ)」「東方(東北)帝国大学」「社会は(社会派)ルポ」など、かなりお粗末である。
2009年1月14日、彩図社、1200円。
読んでみました。
この本を横に、家族で色々話をしていて、
初めて祖父が薬屋の丁稚奉公をしながら
夜学に通っていたことを知りました。
戦前生まれの方に、もっとお話を聞いてみたいな、
と思えてくる一冊でした。