2016年06月10日

上の句

誰かの歌の上句や下句が、ふと頭に思い浮かぶことがある。
先月大阪であった「春の短歌祭」の講演で、栗木京子さんが

「病む人のこころはわからぬものだから」誰の上(かみ)の句ひよんと口出づ       小池光 『思川の岸辺』

という一首が

病む心はついに判らぬものだからただ置きて去る冬の花束
             岡井隆 『斉唱』

を踏まえているという話をされていた。
今日、たまたま同じような例を見つけた。

〈二人のひとを愛してしまへり〉の上の句はなんだつたつけ 新雪を踏む          大口玲子 『ひたかみ』

の元歌は、

陽にすかし葉脈くらきを見つめをり二人のひとを愛してしまへり
             河野裕子 『森のやうに獣のやうに』

である。

こんなふうに並べてみると、パズルを解いているみたいで楽しい。

posted by 松村正直 at 20:29| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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