副題は「捕鯨問題の謎に迫る」。
撮影・監督・編集:八木景子。
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2009年に公開されアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した映画「ザ・コーブ」。そこに描かれた和歌山県太地町を訪れて、町の人々やシーシェパードの活動家に取材し、さらに水産庁の役人や学者などの意見もまじえて、捕鯨問題とは何かに迫っていく。
この映画を観て一番感じたのは「公平」や「中立」に立つのがいかに難しいかということ。そもそも、そんな立場など存在しないのだろう。この映画は、両者の意見を聞きつつも、基本的には反「コーヴ」の立場から撮られていると言っていい。
結局、よくわかったのは、捕鯨問題が単なるクジラの問題を離れて、自然保護団体や各国の政治的な思惑の中でもはや身動きの取れない状況にあるということである。
捕鯨問題をナショナリズムと絡めることなく理性的に論ずるにはどうすれば良いのか。そこが問われているのではないかと思う。「アメリカもかつては捕鯨をしていた」とか、「オーストラリアでは牛や羊を食べている」とか、「アングロサクソンは自分たちが偉いと思っている」といった反論は、残念ながらほとんど意味をなさない。
上映終了後、観客席からは拍手が起きた。「よくぞ言ってくれた!」という気持ちはわかるのだけれど、私には何とも重い気分が残った。
京都みなみ会館。107分。
2016年05月03日
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