昭和4年に樺太の恵須取町で生まれ、昭和22年の引き揚げまで樺太で暮らした著者が、樺太に関する様々な出来事を調査してまとめた一冊。
日中戦争拡大の余波を受けて、国民学校と改称された小学校の修学旅行が中止に追い込まれ、幼い心に深い傷跡を残した出来事は、未だに脳裏を去ることはない。
と記す著者は、還暦を過ぎてからその空白を埋めようとするかのように、樺太について詳しく調べ始める。「樺太日日新聞」の記事を手掛かりに、興味を持った出来事を追究していくのである。
その対象は「エリクソン電話機」「リヨナイ山」「露国式カンジキ」「捕鯨船オルガ号」「カラフトマリモ」「ばれいしょ日の丸一号」など、かなりマニアックなものばかり。歴史の教科書や研究者の本には出て来ないような話が盛りだくさんである。
絵葉書や新聞の記事などの図版も数多く載っていて、当時の樺太の暮らしの様子がよく伝わってくる。372ページという厚さの本であるが、著者が楽しみながら書いているので、読んでいて飽きることがない。
2000年には続編も出ているとのことで、早速購入した。
また読むのが楽しみである。
1995年、私家版、2000円。