ブックレット・ボーダーズNo.2。
副題は「根室と与那国でボーダーを考える」。
国境と言うと紛争や壁といった負のイメージを持つことも多いが、そこは二つの国や地域をつなぐ窓口でもある。地理的にも中央から見れば辺境であるが、国境を越えた交流が深まれば、そこは貿易や往来の最先端になるのだ。
この本は、ボーダースタディーズ(境界研究)を推進する「境界地域研究ネットワークJAPAN」を通じて根室市と与那国町に派遣された、2名の若手研究者が記した現地の状況や問題点の報告である。
与那国町から台湾へ渡る際に
新石垣空港から台湾の桃園空港までは週二便あるが、意外と使いづらい。やむを得ず那覇経由で行くことになるのだが、一〇〇キロそこそこの台湾へ渡るために五〇〇キロ以上も反対方向へ移動しなければならない。
という現状や、根室について
最も印象に残ったのは、根室が自らを「国境の街」と表現できないことだった。日本政府が国境線を「択捉島の北」だと主張している限り、外交上この表現がタブー視されるのは理解できるが、「境界地域」とさえ呼べないことには驚いてしまった。
という問題など、現地に長く滞在した人ならではの話が次々とあり、考えさせられた。
国境というものは、捉え方によって全く違った姿を見せる。国境問題や境界地域を考えるに当っては、岩下明裕氏(国境地域研究学会会長)の
「端っこ」が豊かであれば、それは国自体が豊かである証拠
という言葉を大事にしていく必要があるだろう。
2015年7月10日、国境地域研究センター、900円。