副題は「アンドロイドになった私」。
アンドロイド(人間酷似型ロボット)研究の第一人者である著者が、これまでのロボット研究の成果や今後の展望を記した本。
ロボットの研究を通じて、著者は人間や技術についての考察を深めていく。
人類は、新しい技術を発明するたびに、人間の定義をより深化させてきた。
人間は、普段見ることができる表面形状が人間らしいのであって、体内の構造を見ても人間らしくない。
技術は想像から始まるわけで、その意味ではSFは技術の種の宝庫である。
ジェミノイドを作って、初めて他人の方が自分のことをよく知っているということがわかった。
この著者のすごいところ(変人ぶり?)は、本書に載っている数々のエピソードを読めばわかる。
「どうして同じ服ばかり、それも黒い服ばかり着るのですか?」と、人によく尋ねられる。それに対して、私はいつも、「どうして毎日違う服を着るのですか?」と聞き返す。
さらにすごいのは、著者そっくりに開発したジェミノイドが、5年経って年取った著者との違いが出てきた時に、
ジェミノイドの修理の手間や費用について考えてみると、実は私を修理する方がはるかに早くて安くすむことが明らかであった。(・・・)私自身が若返った方が早いのだ。
と考えて、自ら顔の整形手術に踏み切るところである。
これくらいでないと、その道の第一人者にはなれないのだろうな。
2014年11月1日、新潮文庫、550円。