2016年04月08日

山田吉彦著 『国境の人びと』


副題は「再考・島国日本の肖像」。
「新潮45」の2013年1月号〜14年6月号に連載された文章に加筆修正を加えてまとめたもの。

著者は国境に近い島や辺境の地域を訪ね、日本の領土や海洋権益、安全保障について考察する。訪れたのは、尖閣諸島、対馬、五島列島、隠岐、根室半島、小笠原諸島、与那国島、大東諸島、壱岐、奄美大島、甑島、能登半島、西表島、津軽海峡、沖ノ鳥島、国後島と、日本の隅々に及んでいる。

日本は世界で六番目に広い「海」を持つ国である。

領海と排他的経済水域を合わせた広さは、実に447万平方キロメートル。海のことを考えると、日本は決して小さな国ではなかったのだ。

従来、海と言えば漁業の話が中心であったが、今後技術開発が進めば、海底油田やレアアースなど、この広い排他的経済水域が大きな意味を持つようになる。日本人はもっと海に対して関心を寄せるべきなのだろう。

国境にある島々で人が暮らし、コミュニティを築くことこそが、国の安全を守るためには、最も重要なことである。
離島の過疎化は、日本の海上安全保障上の最大の問題点である。

本書ではこうした主張が繰り返し述べられている。著者と私ではだいぶ立場が違うのだが、離島の過疎化、高齢化への対策が必要という点では共通した思いがある。

2014年8月30日、新潮選書、1300円。

posted by 松村正直 at 20:04| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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