2016年03月31日
夷酋列像
大阪の国立民族学博物館の特別展「夷酋列像(いしゅうれつぞう)」を見に行ってきた。
「夷酋列像」は松前藩士の蠣崎波響(かきざきはきょう)が描いた12名のアイヌの肖像画。1789年に起きた「クナシリ・メナシの戦い」の鎮圧に際して松前藩に協力したアイヌの有力者を讃えるために描かれたものである。
今回はフランスのブザンソン美術考古博物館に収蔵されている原画をはじめ、日本各地に残されている数多くの模写や粉本(下書き)も展示されている。写本を系統立てて整理するように、模写がどのような流れで作成されていったかが見えてくるのが面白い。
また、絵に描かれた衣装や道具に類似した品々の展示もあり、アイヌ文化に対する理解を多角的に深めることができる。
特別展のサブタイトルは「蝦夷地イメージをめぐる人・物・世界」となっており、日本人(内地人)が蝦夷地やアイヌをどのように見ていたかが、大きなテーマとなっている。それは実際の蝦夷地やアイヌとは少し違って、誤解や政治的な意図を多分に含んだものであった。
クナシリ・メナシの戦いはコシャマインの戦い、シャクシャインの戦いに続く大規模なアイヌの武装蜂起であったが、最終的に鎮圧され、参加者のうち37名が処刑される結果に終わった。
松前藩に協力したとされる「夷酋列像」の12名にも、それぞれに苦しい立場や複雑な胸の内があったに違いない。マウタラケ、チョウサマ、ツキノエ、ションコ、イコトイ、シモチ、イニンカリ、ノチクサ、ポロヤ、イコリカヤニ、ニシコマケ、チキリアシカイ。美しく力強い12枚の絵を見ながら、そんなことを思った。
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