副題は「忍者・合戦・幕末史に学ぶ」。
『武士の家計簿』で知られる著者は、13歳の時に家に伝わる古文書を譲り受けて以来、数多くの古文書を読み続け、その成果や発見を一般の人向けに書き続けている。
著者の持ち味は、フットワークの軽さである。少しでも気になることがあると、そのままにはしておかない。
忍者はどれぐらい危険な仕事だったのか。ふとそんなことを思い調べることにした。
武士がちょんまげを結わないと、どうなるか。校則のきびしい学校のように頭髪検査があって叱られるのか。ふと、そんなことが気になった。
いま、津波避難タワーの建設がさけばれている。海岸ぞいで高台のない人口密集地ではまさに命綱だ。ふと考えた。江戸時代に津波避難タワーはなかったのか。
こうした疑問を持つと、著者は古文書を探し始める。古文書の速読ができ、「発見困難な古文書をみつける運がある」著者は、次々と新史料を発掘していく。本当に史料や歴史が大好きなことが、文章の端々から伝わってくる。
新幹線が天王山に一番接近するところから先が激戦地。右の車窓に日立物流の建物がみえるあたりが光秀軍の布陣地だ。古来、合戦は交通の要衝で起きる。古戦場は物流センターになっていることが多い。
「古来、合戦は交通の要衝で起きる」は歴史家なら誰でも言えることだろう。しかし、その次の「古戦場は物流センターになっていることが多い」は実際に現地を訪れた人にしか言えない言葉だ。ここに、著者の持ち味がある。
2012年10月25日、中公新書、740円。