2011年に淡交社より刊行された『日本のかなしい歌100選』を改題して文庫化したもの。
「かなわぬ恋」「わかれの歌」「世は無常」の3部に分かれていて、万葉集から現代に至るまでの短歌100首が解説されている。取り上げられている歌人は、額田王、大伴家持、在原業平、紫式部、藤原定家、源実朝、後醍醐天皇、石川啄木、永井陽子、笹井宏之など。
歌の背景や人物関係などが丁寧に説明されているので、歴史物語としても楽しむことができる。
君が行く道の長手を繰り畳ね焼き滅ぼさむ天の火もがも
狭野茅上娘子
恋ひ死なば恋ひも死ねとやほととぎす物思ふ時に来鳴き響むる
中臣宅守
京都から宅守が配流された越前市まで、今なら特急サンダーバードで1時間10分あまりだが、当時ははるかな距離に感じられたことだろう。
2014年4月1日、新潮文庫、490円。