副題は「Born after 1970 現代短歌日本代表」。
1970年以降に生まれた歌人40名のアンソロジー。
山田航が40名の歌人の各56首を選び、さらに歌人論を書いている。
三輪車つめたく錆びて置かれをり子に叛かれし老母のごとく
高木佳子
銀縁の眼鏡いっせいに吐き出されビルとは誰のパチンコ台か
松木 秀
しばらくを蜜吸ひゐたる揚羽蝶去りゆきて花浮きあがりたり
横山未来子
あなおとなしき駱駝の腹に浮きでたるホースのように太き静脈
齋藤芳生
そよかぜがページをめくることはなくおもてのままにKindleをおく
光森裕樹
白というよりもホワイト的な身のイカの握りが廻っています
岡野大嗣
レシートは冬の陽射しを記録してやがて無文字となる白い土地
吉岡太朗
かあさんは食べさせたがるかあさんは(私に砂を)食べさせたがる
野口あや子
雪が降る(イル・ネージュ) かくも空疎な例文をとなへてあれば
口中さむし 吉田隼人
カーテンに鳥の影はやし速かりしのちつくづくと白きカーテン
小原奈実
他にも「歌集が欲しいんだけどどうすれば手に入るかな?」「歌集ってどういう出版社から出ているの?」といった疑問に答えるコラムや、ブックガイドなどもあり、手に取りやすい内容となっている。
こうしたアンソロジーで好きな歌人を見つけて、さらにその人の歌集を読んでみる、といった流れが広まるといいなと思う。
2015年12月25日、左右社、2200円。