2016年02月01日

河野友美著 『食味往来』


副題は「食べものの道」。
1987年に三嶺書房より刊行された本を改題、文庫化したもの。

北海道で採れるコンブがなぜ沖縄でよく食べられているのかという話を皮切りに、食べものがどのようなルートをたどって伝わり広まっていったのかを考察した本。

著者の幅広い知識と現地探訪によって綴られる話は、どれも非常に面白い。黒潮の流れ、海や川の舟運、街道、気象条件、中国大陸や朝鮮半島からの影響、集団移住など、様々な形の伝わり方がある。

房総半島は紀州、つまり和歌山県とのつながりが非常に深い。例えば、房総半島にある地名をみても、勝浦、白浜といった紀州で有名な地名がここにもある。
水(水上輸送)がどんなに便利であるかは、京都府の北側、日本海に面した丹後地方から有名な織物である丹後ちりめんや米が、船によって関門海峡を通り、瀬戸内から大阪を経て京都に運ばれていたことからもわかる。
山形が大阪や京都といった上方とつながっていた理由は、上方文化が日本海の舟運とともにはいってきたこと、さらに東側、つまり仙台側とは山に隔てられていて交通が不便であったことがあげられる。
信州でも、東信になる千曲川の流域から北信にかけては、東北地方と同様にサケがハレの日の魚になっている。これに対して、天竜川の流域や木曽川の流域など、南信から中信にかけてはブリが祝い魚として用いられてきた。

私たちの暮らしのあり方を考える上で、多くのヒントを与えてくれる一冊である。

1990年9月10日初版、2015年1月25日改版、中央公論新社、1000円。

posted by 松村正直 at 08:10| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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