『サバイバル登山家』『狩猟サバイバル』に続くシリーズ(?)の3冊目。
サバイバル登山とは装備を最小限にして、食料を現地調達しながら長期間おこなう登山である。
鹿、岩魚、ヌメリスギタケモドキ(茸)、ヌメリイグチ(茸)、ヤマブドウ、エゾライチョウ、エゾ鹿、ブルーベリー、ハリウス(カワヒメマス)、カリブーなどを食べながら、著者は登山や縦走をしていく。
この本に収められているのは
・奥多摩、奥秩父、冬期サバイバル登山
・南アルプス、夏期サバイバル登山
・南会津、夏期サバイバル登山
・知床半島秋期サバイバル継続溯下降
・四国、剣山山系、冬期サバイバル登山
そして、ロシアの北東端、チュコト半島にあるエル・ギギトギン湖への旅である。
中でもチュクチ族のトナカイ遊牧民ミーシャとの出会いは、著者に大きな刺激を与えたようだ。
ミーシャは本物だ。猟師として完成している。(…)生まれもった自然児としての才能。その上に、いったいどれだけの試行錯誤をくり返し、どれだけの経験を積み重ねて、ミーシャは今の深みに達したのだろう。
いや、おそらくミーシャだけじゃない。私が知らないだけで世界中にそんな猟師がたくさんいる。(…)猟師だけにとどまらない。木こり、漁師、遊牧民、罠師、なんでもいい。世界中にミーシャがいる。
旅の記録と様々な思索が一体となって、著者の文章は深い味わいを醸し出す。「この世界に対してゲストではありたくない」という信条が、ぐいぐいと伝わってくる一冊だ。
2015年6月25日、みすず書房、2400円。