2016年01月29日

異例の若さ

山田航編著『桜前線開架宣言』を読んでいて、気になった箇所がある。

「京大短歌」出身で、異例の若さで短歌結社「塔」の主宰となった吉川宏志(一九六九〜)も、若手への影響力が大きい歌人である。

さらっと読み過ごしてしまいそうな文章である。結社の主宰というと年配の方が多いので、確かに「異例の若さ」という気もする。でも、本当にそうだろうか?

まず、「塔」について、生年と主宰になった年を見てみると

高安国世 1913年、1954年(41歳)
永田和宏 1947年、1993年(46歳)
吉川宏志 1969年、2015年(46歳)

となって、別に「異例の若さ」ではないことがわかる。
他の結社はどうだろうか。

近藤芳美(未来)  1913年、1951年(38歳)
宮柊二(コスモス) 1912年、1953年(41歳)
馬場あき子(かりん)1928年、1977年(49歳)
春日井建(中部短歌)1938年、1979年(41歳)
三枝昂之(りとむ)  1944年、1992年(48歳)
大塚寅彦(中部短歌)1961年、2004年(43歳)

など、40歳代で結社の主宰になるというのは、ごく普通のことなのである。

このことに限らず、何でも書かれていることを鵜呑みにするのではなく、自分なりに考えながら読むことが大事だろう。

posted by 松村正直 at 07:22| Comment(2) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
思い込みをデータが見事にひっくり返して、痛快です。いや正直なところ、私もなんとなく、「近年では異例の若さ」といったように感じていましたから。三枝昂之さんや大塚寅彦さんも四十代で結社主宰になったとなると、近年の限定付きでも、異例とはいえないですね。
Posted by 中西亮太 at 2016年01月31日 22:49
中西さん、コメントありがとうございます。
主宰就任時の年齢として見ると、四十代はそれほど若いわけでもないのですね。ただし、主宰は死ぬまで務めることが多いので、主宰の平均年齢は必然的に高くなります。

四十代くらいで主宰に就任するなり、新たに結社を立ち上げるなりしないと、きっと体力的にもしんどいのだと思います。

ちょうど今朝の読売新聞に「セ全球団 40代監督」という記事が載っていました。今年のセリーグは6球団とも40代の監督だそうです。
Posted by 松村正直 at 2016年02月01日 08:25
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