現代歌人シリーズ7。
2009年から2015年までの作品251首を収めた第2歌集。
不定期に休むナカムラ理容室木の鏡台をふたつ並べて
立つことを知りはじめたる子はひとり額に星を貼りておとなし
カーテンを閉ざして一人ひとりずつ妊婦は胎児を膨らましおり
薬缶みがきみがき上げたる曲線に夜の疲れた君は浮かびぬ
ひざ掛けはいかがでしょうか?ほほ笑みを左右にわけて女通れり
子の下着ばかりを畳む三人の子あれば三つの異なるサイズ
牛乳は福ちゃん牛乳しか知らず盆地は雪に包まれゆけり
1首目、昔ながらの個人経営の理容室。「木の鏡台」が時代を感じさせる。
2首目、遊んでいたシールが貼り付いてしまったのか。1歳くらいの赤子。
3首目、産婦人科の部屋の光景。「一人ひとりずつ」が生々しい。
5首目の「女」は飛行機のキャビンアテンダント。「左右にわけて」がうまい。
7首目には「十代の頃」という詞書が付いている。作者のふるさとは福島市。福島乳業の「福ちゃん牛乳」である。
2015年11月26日、書肆侃侃房、1900円。