山腹の急斜面すべりすべりつつひたにすみたるわが心かも(スキー)
両岸に雪ふかぶかとつみたれば流れほそまりて川流れたり
吹雪風ふきすぐる街の四つ角に糞まりてゐる犬の子あはれ
大吹雪昨夜ひと夜ふりわが家の玄関の戸をうづめたるかも
ふかぶかと野に雪あれど川岸の柳つのぐむ日となりにけり
「冬小景」5首より。
1首目、スキーをして次第に心が澄み切ってゆく。樺太はスキーが盛んで、豊原近郊の旭ヶ丘には当時東洋一と言われたスキー場があった。
2首目、雪が積もって川幅が普段よりも狭く見えている。
3首目、寒い吹雪の中で糞をしている子犬の姿。
4首目、一晩で玄関が埋まってしまうほどの激しい雪である。
5首目、柳が芽吹いて長い冬もようやく終わりを迎えようとしている。