雑誌「美術手帖」の企画で漫画家の井上雄彦が全国に残る円空仏を訪ねてまわったもの。文章はライターの手によるもので井上が書いたものではないが、全部で80点にものぼる井上のスケッチが収録されている。
円空物を訪ねる旅は「岐阜の旅」に始まって、「青森・北海道の旅」「岐阜・愛知・滋賀・三重の旅」(前編)(後編)と続く。円空についてほとんど何も知らなかった井上が、旅を重ねていく中で、「目に水がこみあげてくるのを抑える努力をしなければならなかった」「一体一体、拝みたくなるような何かがある」といった心境に達する流れが自然と伝わってくる。
清峰寺(岐阜県)の「千手観音菩薩立像」「龍頭観音菩薩立像」「聖観音菩薩立像」や上ノ国観音堂(北海道)の「十一面観音立像」、大平観音堂(滋賀県)の「十一面観音立像」など、印象に残る仏像がたくさん出てくる。
巻末には「円空Q&A」があり、
円空が美術史的な観点で注目されるようになったのは戦後です。
といったことなども記されている。
2015年10月1日、美術出版社、2200円。